
弁護士の佐野です。
引き続き、誰かがおじいちゃんの財産を使い込んでいた場合を考えますね。
2. 相続人が使い込んでいた場合
亡くなったおじいちゃんの相続人が使い込んでいた、という場合が紛争になりやすいでしょう。
使い込んでいなくても、例えば長男が家を買うのにおじいちゃんが支援してあげたのですが、それが贈与だった(特別受益)のか貸し付けだったのか、よく分からないということもあります。
親子の話なので、わざわざ契約書を作ることもないし、贈与税を納めてもいないというようなことはありがちです。
その場合、遺産分割協議とは別に、法定相続分について請求するということになります。
しかし、それってどうなんでしょう?
Aさんがおじいちゃんから1000万円借りていて、相続財産が1000万円ある場合、Bさんは、遺産分割協議で500万円もらい、別途Aさんに500万円を請求する、ということになります。
揉めてなければ、Bさんが1000万円をもらって、Aさんの借金はチャラ、で簡単に済むはずです。
揉めていれば、Bさんは相続財産1000万円の遺産分割調停を家庭裁判所に起こし、別途貸金返還請求権(または不法行為か不当利得)に基づく500万円の請求を地方裁判所に起こす必要があることになってしまいます。
先に遺産分割調停が成立したら、地裁の訴訟の結末を待つだけですが、地裁の訴訟の見通しを考えながら調停で話し合いをするとなると、無駄に揉めそうです。
地裁の訴訟が先に終わったら、遺産分割調停で実質的に蒸し返しになる可能性もあります。
めんどくさいですね。
この場合、せめて遺産分割調停に一本化したいところです。
そこで、遺産分割の対象にするという合意をすれば、家庭裁判所に一本化して話し合えます。
3. 相続人以外の人が使い込んでいた場合
亡くなったおじいちゃんの孫が使い込んで、その間のお父さんお母さんが亡くなっていない場合とか、世話や介護をしていた親族なんかが使い込んだ場合とかが考えられます。
こういう場合は、返してくれなければ裁判を起こすしかなさそうです。
それぞれ法定相続分での裁判になるので、相続人みんなで裁判するか、各自で裁判するか、というようなことになります。
果たして、全員一丸となって裁判できるか、あるいは全員がもれなく裁判できるか、どうなんでしょう。
世話をしてくれていた人だと、おじいちゃんのために使った正当なものか、着服したのか判然としないこともあるでしょう。
これを防ぐには、信頼できる誰かが財産を預かっておくなり、成年後見制度を利用するなり、別の手立てを考えなければなりません。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか。
実際のところ、使い込まれていたら回収するのは難しいことが多いです。
あんまり難しい難しいと強調すると、使い込んでも大丈夫みたいな誤ったメッセージになりかねないため、普通の解説サイトでは言葉を濁していることが多いと思います。
ただ、先日、給付金約4600万円の誤送金を返さなかった若者が逮捕されたという話もありました。
逮捕の適否は問題となるところですが、それはさておき、ただで済むとは限らないということは警告しておきたいと思います。
2022年7月25日