弁護士の佐野です。
今回は遺言について書いてみたいと思います。
といっても、遺言そのものはそんなに難しい話ではありません。
法的に有効になる要件と、書き方についての注意とを確認しておくくらいです。
遺言はその取り扱いが問題です。
書いても発見されなければ、何の意味もありませんよね。
秘密にしておきたかったのに、ばれたためにややこしいことになっても困ります。
では、見てみましょう。何回かに分けて書いていきます。
目次
1. そもそも遺言の種類は?
2. 遺言の管理はどうする?
3. 法務局における遺言書の保管等に関する法律
3.1. どこに保管されるの?
3.2. どうやって申請するの?
3.3. どう保管されるの?
3.4. 保管してもらうのを止めるのはどうするの?
3.5. 遺言者が亡くなったら、相続人はどうしたらいいの?
3.6. 遺言書情報証明書の取り扱い
3.7. 遺言書保管制度のメリットデメリット
4. まとめ
1. そもそも遺言の種類は?
遺言の種類については、遺言の撤回のところで書いていますが、以下、そのまま再掲します。ちょっと手を加えているところもありますが、内容に違いはありません。
普通の方式による遺言には3種類あります。自筆証書、公正証書、秘密証書というものです(民法967条)。
特別の方式は、今にも死にそう(民法976条)などの場合ですが、かなり例外的で私も見たことがありません。なので、ここではあえて触れません。
自筆証書遺言と秘密証書遺言の違いは、封がされていることです。
封印の仕方に、公証人と証人の署名と押印などの細かい定めがあります(民法970条)。
ただし、その方式に欠けるものがあっても、自筆証書遺言としての効力を有しています(民法971条)。
ただ単に、遺言を作成して、そのことを秘密にしているという意味ではありません。
秘密証書遺言を作成したよと伝えていても、秘密証書遺言です。
内容が秘密であるから秘密証書遺言となります。
封印がされているということは、遺言は本人が作成したものに間違いないだろうという推定が強くなると思います。
誰かが納得しないような内容であるからこそ秘密にし、争われたくないからこそ秘密証書遺言にするということでしょうから、動かしがたいということになるでしょう。
紛争になった例は私は経験がありません。
なお、勝手に開封すると、5万円以下の過料が課されることがあります(民法1005条)。
自筆証書遺言と公正証書遺言は、公証役場で作成してもらうかどうかの違いがあるということと、きちんとした文章で作成してもらえるということと、遺言の検認手続が不要(民法1004条2項)であるということが違います。
自筆証書遺言は、検認を経ないで勝手に遺言を執行すると、5万円以下の過料が課されることがあります(民法1005条)。
公正証書は、即時に執行できるところがとても使い勝手がいいところです。
誰かが亡くなって、心痛のところに家庭裁判所に相続人が集まって、自筆証書遺言の検認手続をするというのは、とても面倒です。
自筆証書遺言(秘密証書遺言)の内容が分からないと、みんなはらはらして検認手続をし、改めて内容を確認し、紛争になったりします。逆に、自筆証書遺言の内容が分かっていて紛争にならないようなら、検認手続は単に面倒でしかありませんね。
2022年6月6日