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遺留分 1

2022/04/18
カテゴリー: 遺留分 タグ: 遺留分
佐野 就平






弁護士の佐野です。




2019年に民法改正があり、遺留分制度が改正されました。

みなさん、遺留分という言葉は聞いたことがあると思います。
漠然と、全部取られることはない、一部はもらえるという程度の認識を持っている方が多いのではないでしょうか。

実はこれがなかなかやっかいでして、細かい計算をするとなると複雑で面倒ですし、争っているうちに色々と計算の前提の事実が分かってくるということもあります。

今回は、あえてこのお話に取り組んでみましょう。何回かに分けて書いていきます。


目次

1.遺留分とは
2.遺留分が認められる人は?
[なぜ兄弟姉妹には遺留分はないのか]
3.遺留分の割合

4.遺留分を算定するための財産の価額
4.1.相続開始の時において有した財産の価額
4.2.贈与した財産の価額を加えた額
4.2.1.贈与の相手によって変わる
4.2.2.贈与が負担付きの場合
4.3.債務の全額を控除した額

5.実際に請求できる遺留分侵害額の計算方法
[具体例]
5.1.1.おばあちゃんに家を残そう
5.1.2.家業が心配だ
5.1.3.介護をよろしく頼む

6.遺留分侵害額の請求
7.遺留分侵害額請求の期間制限
8.まとめ


1.遺留分とは


遺留分は、基本的には相続人の生活を保障する趣旨の制度だといわれています。


遺産は被相続人の所有していた物や権利だったわけですから、その分配を遺言でどのように指定しようが、誰に贈与しようが、本来、それは被相続人の自由のはずです。

例えば、全ての遺産を誰か一人に相続させたり、家族が住むべき不動産を愛人に贈与されたりすることも考えられます。

しかし例えば、相続人のおばあちゃんがお金も家ももらえないとなると、とたんに生活ができなくなりますよね。
そうでなくても、「自分が何ももらえないのはひどい」「これからの生活はどうしたらいいんだ」といった不満や悩みも出てきてしまいます。

被相続人の気持ちを反映した遺言を尊重することも大切ですが、だからといって、何でもかんでも許されるとするのはよくありません。

そこで民法は、遺言によっても侵害できない範囲(侵害された人が不満に思えば請求してもいいという範囲)があるんですよと決め、相続人の生活を保障するとともに、極端な不公平を防止しました。

後に述べますが、配偶者は最も多い2分の1の遺留分が認められているので、相続人の生活保障というのもうなずけます。


2.遺留分が認められる人は?


まず、遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人です(民法1042条)。

つまり、直系の人だけということになります。
子、孫や、両親、祖父母ですね。
孫が大金を持って亡くなるというのはレアケースでしょうが、一応そういうことになります。

では、なぜ兄弟姉妹には遺留分はないのでしょうか。

兄弟姉妹に遺留分がない理由は、国会図書館などできちんと調べれば趣旨は分かるのかもしれませんが、ネットではちょっと資料は発見できませんでした。

ただ、理由はどうも、兄弟姉妹は別の「家庭」でしょ、ということのようです。

独立して別の家庭を持って自立しているでしょ、ということで、あえて亡くなった方の遺言に反してまで認めることはないでしょ、ということのようです。

確かに、一般に、親子は一緒に住むことはありますが、兄弟姉妹は結婚して別の家庭を築くことが多いですよね。
とすると、遺産を遺言に反してでも残してあげる必要性が高いのは、配偶者や子ということになりそうです。


ただ、あくまで個人的な感想なんですが、戦前の家制度の不都合性の名残ではないかという気もします。
保守的な地域では、今でも長男に全てを相続させる風習が残っているそうです。
戦前の家督相続と同じ感覚ですかね。

家督相続は昭和22年の民法改正まであり、現在でも古い相続事件だと家督相続を考えないといけないケースもあります。

明治民法下では、家督相続、つまり、嫡出の長男が単独相続するのが原則でした。
遺留分制度は、戸主の自由な財産処分を制限して、家の財産が散逸するのを防ぐことが目的だったようです。
戸主が「家」にとってとんでもない遺贈をしたような場合、「家」としては財産を守る必要があったでしょう。
しかし、兄弟である分家は財産を守る必要はありません。
本家がすべきことですね。

戦後、日本国憲法にそぐわない部分が改正されましたが、遺留分制度は残ったようです。
その後、趣旨は生活保障ということになったようですが、流れからすると、そういう機能があるというだけであって、趣旨は後付けになりますね。
実際、それなりの年齢になって独立している子の生活保障といわれても、疑問が残ります。

まあ、あくまで個人的な感想でしかありません。遺留分制度は合理的だと思いますし、世間に浸透している現在、否定する理由もありません。
言いたいのは、理由はともあれ、近しい人については、遺言よりも相続人の意思が優先されるルールとして決まっているということです。


3.遺留分の割合


遺留分の割合も、民法1042条に規定されています。

  • 直系尊属、つまり両親や祖父母のみが相続人の場合は3分の1
  • 子、孫の場合は2分の1
  • 配偶者も2分の1


とされています。

子が複数とか、両親がそろっているような場合は、それぞれ頭割りになります。

例えば、6000万円を残して亡くなった夫が、愛人に全部相続させると遺言を残していたとします。
とすると、愛人に全て遺贈されることになり、相続人には相続分はありません
遺留分はこうなります。

父親のみ

・6000万円×3分の1=2000万円


配偶者と両親のみ
・配偶者   6000万円×3分の2×2分の1=2000万円
・両親    6000万円×3分の1×3分の1×2分の1=各約333万円


配偶者と子ども2人
・配偶者   6000万円×2分の1×2分の1=1500万円
・子ども   6000万円×2分の1×2分の1×2分の1=各750万円


という感じですね。
これ以上の細かい計算はここではしないでおきます。

2022年4月18日

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