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学校はなぜ4月1日ではなく2日生まれの子からが同じ学年になるの? 初日算入と期間の終了

2022/04/11
カテゴリー: 年齢計算 タグ: 年齢計算
佐野 就平






弁護士の佐野です。



子どもから質問されました。

4月2日の子が学年で一番年上やけど、なんで4月1日の子とちゃうの?


「早生まれ」のよくある質問ですね。

女性では、学年で一番若いからと喜ぶ人もいます。
保護者からすると、1日違いで学年が変わり、発育が最大1年違う中で成長するので、何かと不利になるのではと不安になったりすることもあろうかと思います。

ここでは、なぜ4月1日ではないの?4月1日の方が分かりやすいんちゃうの?という疑問について書いてみたいと思います。

まあ、探せばたくさん記事はありますし、目新しいものではないのですが。。。



目次

1.早生まれとは?
2.早生まれの子はなぜ前の学年に組み入れられるのか?
3.6歳にはいつなるの?年齢の計算について
4.1日のずれの発生
5.期間の満了はいつ?
6.まとめ


1.早生まれとは?


早生まれとは、1月1日から4月1日の間に生まれた子のことです。
年で考えると、その年に早く生まれた子、という意味になろうかと思いますが、10月1日から12月31日の間に生まれた子を、あえて遅生まれと言うことはありませんよね。

あえて区切りをつけるのは、学校の学年と結びつけられるからです。

翌年の1月1日から4月1日の間に生まれた子は、前年の学年に組み入れられるため、早生まれということになるわけですね。


2.早生まれの子はなぜ前の学年に組み入れられるのか?


では、なぜ早生まれの子は、前年の学年に組み入れられるのでしょうか。

学校教育法施行規則59条には、

  • 小学校の学年は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

とあります。

新型コロナウイルスで大学の9月入学が話題に上りましたが、小学校(中学校も同じです)の学年の期間の変更は、この規則を変更すれば可能ということになります。

とりあえず、ここでは4月1日開始というのがポイントです。


また、学校教育法17条1項には、

  • 保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、・・・小学校・・・に就学させる義務を負う。

としています。

ちなみに、学校教育法17条2項には、

  • 保護者は、子が小学校の課程・・・を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、・・・中学校・・・に就学させる義務を負う。

としていますので、中学校も引き続いて同じことになります。

学年の規則に合わせて、満6歳かどうかを考えるので、何年生まれか、ということとのずれが生じるわけです。


3.6歳にはいつなるの?年齢の計算について


では、なぜ4月1日までが前の学年に組み入れられ、4月2日からなんでしょうか。

実は、「年齢計算ニ関スル法律」というものがあります。
カタカナになっているのは、間違いではありません。
なんと、明治三十五年の法律で、改正されないまま今まで使われているのです。

この法律は3項から成り立っています。3条ではありません。条文すらない簡単な法律です。
そのうちの2つはこうなっています。

  • 1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
  • 2 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

一応現代語訳すると、

  • 1 年齢は出生の日から起算する
  • 2 民法143条の規定は、年齢の計算の時にも適用する

ということになります。

で、民法143条は、暦による期間の計算を定めています。その2項では、
その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。
としています。


つまり、

出生の日が起算日(生まれて1日目)となる(年齢計算ニ関スル法律1項)。

起算日に応当する日の前日に1年の期間が満了(満1歳)する(民法143条2項)。

となります。

となると、4月1日生まれの子は、何時に生まれていようとも、4月1日が初日として1日分カウントされ、3月31日をもって満1歳となるわけです。4月1日は、満1歳と1日目ということになるんですね。

なぜ初日算入ということになったかは分かりません。

仮に初日不算入とすると、4月1日生まれの人は、翌年の4月1日満了によって満1歳となります。

4月1日はまだ0歳なので、その日に満1歳の誕生パーティーはできませんね。

また、当日の開始ではなく前日の満了にするということについては、閏年の2月29日生まれの場合を考えたから、という話もあるようです。

2月29日の開始が4年に1回では不都合でしょ、ということのようです。

ですが、法律的に考えると、期間は満了をもって判断するので、そもそも「当日の開始」で判断するというのは違和感が残ります。

また、初日算入なら2月29日生まれの子は翌年2月28日の満了で満1歳になります。

初日不算入とすると、2月29日生まれの子は3月1日からカウントするので、やっぱり翌年2月28日の満了をもって満1歳となります。

どちらも同じなので、あまり2月29日生まれは関係なさそうです。


4.1日のずれの発生


ここで改めて、学校教育法17条1項の

  • 子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから

を見てみましょう。

年齢4月1日生まれは3月31日で満1歳
学年4月1日から
法律満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初め


という関係になります。

何時であれ4月1日で生まれた子は6年後の3月31日をもって満6歳になります。

ですので、3月31日に生まれた子も、4月1日に生まれた子も同じ学年ということになります。

みなさん、この説明だけで分かりますでしょうか。分かる方はとても頭の言い方ではないでしょうか。
私は、これだけでは、すっと頭に入りませんでした。
表で説明してみましょう。

2021年4月2日~12月生まれ2027年4月1日~12月満6歳
2022年1月~3月30日生まれ2028年1月~3月29日満6歳
2022年3月31日生まれ2028年3月30日満6歳
2022年4月1日生まれ2028年3月31日満6歳


となります。

2022年4月1日生まれの子が満6歳となる2028年3月31日の翌日以後における最初の学年の初めとなるのは2028年4月1日です。

ですので、上記の子ら、つまり2021年4月2日から2022年4月1日生まれの子らが、同じ学年になります。

4月2日生まれの子は、2029年4月1日の学年になるんですね。


5.期間の満了はいつ?


少しマニアックな話をします。

先ほどはしれっと、4月1日生まれの子は3月31日をもって満1歳となると書きました。

正確には、3月31日午後24時か4月1日午前0時か、ということになります。

民法では、期間はとても意味を持ちます。
例えば、「3月31日までに貸した1万円を返せ!」と言われたとき、いつまでは借りていられるかと考えましょう。

31日までに、ということなのですから、31日中は借りていられますよね。
普通は31日の昼間とかに返すわけですが、午後11時59分までに返せば、「31日までに返したんやから文句あらへんやろ!」と主張できるわけです。

まあ常識的には、そこまで引っ張るのはどうかとは思いますが、法律上は31日までに返した、ということになります。

31日の経過をもって遅れたということになります。これを期間の「徒過」といいます。

銀行振り込みに午後3時までに行かないと~!と慌てるのは、午後3時以降だと着金が翌日になるので、深夜12時を過ぎてしまうから、ということになります。

最近では、ネットでの送金などもあり、午後3時というのはあまり意味がないかもしれませんね。

確認する方も、期限の翌日確認して、前日までに入っていなかったと文句を言うと思います。


民法では、140条に、

  • 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

とあります。
これを初日不算入の原則といいます。

例えば、1日だけ1万円貸してあげる、と言われたとき、初日算入すると、その日の深夜12時に返さなくてはならなくなってしまいます。
初日不算入なら、翌日中に返せばいいということになります。
初日不算入で、丸1日確保してあげることになり、借りてる方に有利になりますね。

なお、午前0時から始まるときは丸1日ありますので、別途丸1日確保することはないという制度になっています。

個人的には、制度論でしかないので、慣れればどちらを原則にしても構わないとは思いますが、とりあえず初日不算入が原則とされています。

年齢計算では初日を算入するということにしていますので、原則に対する例外の場合となり、はっきりと書いてあるし、はっきりと書かなければならないわけです。

そして、期間の満了については、民法141条では、

  • 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

とされています。

前条の場合とは、日、週、月又は年によって期間を定めたときのことです。

末日の終了、つまり、深夜12時になった時点で満了ということになるのです。

年齢計算においては、4月1日生まれで初日算入して丸1年は3月31日が終了するとき、となり、3月31日の終了で満1歳となるのです。

なお、末日が日曜日や祝日とか、土曜日などその日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する(民法142条)とされています。

これは、取引が想定されているからですが、年齢計算には関係ありません。


6.まとめ


いかがでしたでしょうか。


学年が4月2日生まれの子から、という話も、実は民法と関わりがあるものでした。


分かりやすく4月1日生まれの子からをまとめて学年とした方がすっきりするとは思いますが、学年のためだけに明治時代からの法律を変えるのもどうかという気もします。
また、学校教育法施行規則を、学年は3月31日から翌年3月30日までとするのも、何となくバランス悪い感じしますよね。

年齢の考え方の慣習 と 年齢計算の法律 と 学校制度 が、あれを立てるとこれが立たずという三つ巴で絡んだ問題でした。
三つ巴なので、だからどうするの?ということにはなかなかならなさそうです。

2022年4月11日

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