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相続登記が義務化されました。気を付けるべきはどこ? 4

2022/02/01
佐野 就平





弁護士の佐野です。




続いて、相続に関する改正について見ておきます。


2.3.遺産分割に関する新たなルール


誰かが亡くなってから遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されて多数の相続人が関係してきます。これを数次相続といいます。

こうなると、遺産の管理は誰がするのかということになりますし、処分するにも身動きとれなくなります。

そのため、早く遺産分割する必要があります。


また、遺産分割をする際には、法定相続分をベースに、特別受益や寄与分などを考慮します。


しかし、生前贈与はかなり昔にさかのぼったりしますし、寄与分も算定が困難だったりします。
にもかかわらず、長期間遺産分割せずにいると、証拠等がさらになくなってしまっていて、感情的な紛争になって、遺産分割がまとまりにくくなるということもあります。


ということで、被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分を考慮せず、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うこととされました(民法904条の3)。


また、遺産分割しない旨の契約についても、10年という期限を設けました(民法908条)。

これは、施行前の相続についても適用されます。また、5年の猶予期間があります(民法改正法附則3条)。

これらは、遺産全体を規定しています。

しかし、株や預金が分割されなくても特に大きな問題はないわけで、所有者不明土地の解消がテーマなのですから、やはり土地建物を意識した規定ということになります。

つまり、10年もほったらかしにせず、いい加減分割しろよ、きれいにしろよということです。

いろんな事情はあるかもしれないが、亡くなってから10年経てば、特別受益も寄与分も主張できないよ、そうすると裁判所が法定相続分で決めることになるよ、それが嫌なら遺産分割協議を進めてね、ということになります。

たくさん生前贈与を受けている人は、寄与分たっぷりの人から遺産分割協議を持ちかけられても不利なので、10年経過するのを待つことになります。

寄与分たっぷりの人は、10年以内に遺産分割調停を申し立てなければなりませんし、10年経過したら、たくさん生前贈与を受けている人は、待ってましたとばかりに遺産分割調停を申し立てることになります。

紛争誘発のようにも見えますが、やはり相続を放置するのはよくありませんので、仕方ないかなあという感じです。

できれば感情的にならずに、早々に遺産分割を終え、すっきりしていただきたいところです。「調停なんか起こしやがって」と思うのではなく、積極的生産的に利用していただきたいですね。


3.まとめ


いかがでしたでしょうか。

一概に所有者不明土地といっても、相続人多数で都市部や住宅街に放置された空き家もあれば、放置森林もあれば、無価値物件、所有者たる法人が消滅して無主物になった土地など、様々あります。

相続に限ってみても、なぜそうなったのか、その原因に合わせた大なたを振るわなければ、根本的な解決は難しいのではないでしょうか。

もちろん、まず相続人がきちんと解決すべきものではあります。

しかし、それでは難しすぎるから、所有者不明土地が膨大で、社会問題(というか国家財政や経済の問題)ということになっているのではないでしょうか。

であれば、相続登記の義務化などの市民の義務に矮小化したところで、多少効果は期待できるとしても、根本的に改善されるとは思えません。

何百万円も払ってきちんとするくらいなら、過料10万円を払ってもいいや、そうなるんではないでしょうか。

気になる人は、相続放棄してください。

それで全ての面倒から解放されます。

不動産を争ってでも相続して、全部計算してプラスと判断できるなら、相続すればいいのです。

相続人の全員が相続放棄したら国が困る、みなさんに迷惑では?ということは考える必要はありません。

相続人全員が相続放棄をすれば、相続人のあることが明らかでないとき(民法951条)となります。

そうなると相続財産管理人が家庭裁判所に選任されることになります(民法952条1項)。

ただし、それには、「利害関係人又は検察官」の請求が必要です。

利害関係人は、無価値のものについてわざわざ相続財産管理人の選任請求をしません。

不動産に多少なりとも価値があるなら、利害関係人が選任請求します。

不動産がとても価値があるなら、検察官が選任請求すればいいのです。

相続登記義務化は、それはそれでいいことだとは思いますが、個々いろんな事情があり、はいそうですかとはいきません。

悩む前に、ぜひ相続遺言サポート協会にご相談いただきたく思います。

2022年2月1日

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