こんにちは、行政書士の山本です。
今回から、シリーズ「このような方は必ず遺言書のご準備を」をお送りします。
第1回目は、『子どものいらっしゃらないご夫婦』に関してです。
私は、セミナーや相談会を京都の各地でさせていただいています。
その時に、子どものいらっしゃらないご夫婦の場合は、
・ お亡くなりになった方の配偶者と亡くなった方の親御さんがいれば、親御さんにも
・ 親御さんがすでにお亡くなりになっていた場合は、ご兄弟にも
相続権がありますよとご説明すると驚かれる方が非常に多いです。
夫婦で築いた財産なのだから、「一方が亡くなったら、全てもう一方のものになるでしょう」とおっしゃるお気持ちはよく分かります。
ところが、遺言書がない場合の法定相続ではそうではありませんので、注意が必要です。
また、「親兄弟全部亡くなっている場合はどうなるのですか?」とお尋ねになられるのですが、その場合は、ご兄弟のお子さん、いわゆる甥や姪に相続権があります。
少し簡単にモデルケースでご説明いたします。
あるところに本山さん夫婦がいらっしゃいました。お二人は仲が良かったのですが、子宝に恵まれず、お子さんはいらっしゃいません。本山夫妻には、ご主人名義の土地、建物と預貯金があります。財産評価は土地と建物で1500万円。預貯金が合計で900万円ありました。
そのご主人が亡くなり相続手続を行うことになりました。
全部奥さんが相続できると思っていたら、そうではありませんでした。
ご主人のご両親は既に他界されていたのですが、ご兄弟は一郎さん、次郎さん、三枝さんがいらっしゃいました。
その内、一郎さんと次郎さんは既にお亡くなりになっており、一郎さんには海斗さん、陸斗さんと二人の息子さんがいらっしゃいました。
次郎さんには、泪さん、瞳さん、愛さんと三人の娘さんがいらっしゃいます。
この場合は、相続人となられるのは、本山さんの奥さん、三枝さん、海斗さん、陸斗さん、泪さん、瞳さん、愛さんの7名となるのです。
この7名で遺産分割協議を行い、その内容をまとめて書面にしたものに全員が実印を押印して、印鑑登録証明書を添えて、相続のお手続きをすることになります。
ちなみに、この場合の相続分ですが、
・ 奥さんが3/4
・ 三枝さんが1/12
・ 海斗さん、陸斗さんがそれぞれ1/24
・ 泪さん、瞳さん、愛さんがそれぞれ1/36
となります。金額的には、
・ 奥さんが1800万円
・ 三枝さんが200万円
・ 海斗さん、陸斗さんがそれぞれ100万円
・ 泪さん、瞳さん、愛さんがそれぞれ66万6666円と2円
となります。
奥さんからしてみれば、土地と家はこれからも住み続ける土地と家を相続し預貯金から300万円を相続したら、後の600万円は他の相続人に分配しなければなりません。
普段から交流のある甥や姪であるのであれば、皆さんからのご協力を得ることはあるのでしょう。「相続財産なんていらないよ、何も言わずにはんこ押すよ」とおっしゃってくれるかもしれません。
しかし、そうではない方もおられるでしょう。
そういう場合は、簡単に押印してもらえず、手続をすんなり進めることができません。
そういう方が多ければ多いほど、1人1人に説明していく時間も手間もかかり、手続も非常に煩雑になってきます。所在不明の方がおられると、探すだけでも相当大変です。
また、皆さんには相続権が発生しているので、中には「貰えるものは貰いたい」と言って権利を主張されてくる方も少なくありません。残された奥様は想像を絶する気苦労をされることとなるでしょう。
このようなことにならないために、遺言書をご準備ください。
遺言書があれば、他の相続人に協力をお願いしなくても、その内容どおりに手続を行うことができます。
他の相続人との調整は、その後ゆっくりと行うことが可能です。
また、兄弟姉妹や甥姪が相続人の場合には、遺留分も発生いたしませんので、全て奥様にと書いてあれば、全ての財産が奥様に相続されます。
あなたの大切な人のために、今できることがございます。
遺言書は元気なうちにご準備くさい。
2021年12月8日