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特別受益4 持ち戻し免除

2021/12/20
佐野 就平





弁護士の佐野です。




やっと本論までたどり着きました。

おじいちゃんが誰かに何かをあげても、特別受益にならないものは、その人がもらえますし、遺産分割でも考慮に入れなくてかまいません。

特別受益になっても、持ち戻し免除があれば、同じく遺産分割で考慮に入れなくてかまいません。

つまり、この持ち戻し免除を上手く使いこなせるかどうかが大事なのです。
これには遺留分侵害額が関わりますが、これは別途説明します。
ここでは持ち戻し免除について書きます。


4.1. 民法改正前


相続人の誰かに何かをあげた場合、特別受益になれば、相続財産に含めて計算しなければなりません。


例えば、1000万円の預金と3000万円の不動産があり、不動産を妻にあげても、結局3000万円を戻して(持ち戻し)、合計4000万円で遺産分割しなければなりません。


特定の人に何かをあげる場合、

1 相続分の一部としてあげる

2 それしか相続させないつもりであげる

3 相続とは関係なしにその人にあげて、相続は残りの財産だけで分割するつもりであげる

という3パターンがあります。

1の場合、例えば、3000万円の預金と2000万円の不動産があり、子2人ABで分割するが、2000万円の不動産はAがもらっていて特別受益だという場合を考えます。

この場合は、不動産は相続分の一部の趣旨なので、Aは不動産2000万円と預金500万円、Bは預金2500万円ということになります。

2の場合、同じ例だと、Aはそれしか相続させないという趣旨なので、Aは不動産2000万円、Bは預金3000万円ということになります。

3の場合、同じ例だと、Aは相続関係なしに不動産をもらうので、不動産は別にして、Aは預金1500万円、Bは預金1500万円ということになります。

そうはいっても、あげるときに、明確に123のどれになるかはっきりさせていることなんて、そうそうないと思います。
分からない場合の考え方としては、まず1、それで不都合なら2、特に意思表示がある場合は3となります。

ただし、3の場合、「明示または黙示」の意思表示が判断され、結局はっきり言ってなくてもそう思われる場合はそうしましょう、という判断がされます。

書面に残すのを避ける人も多いですが、はっきり証拠に残しておかないと、「わしが死んだらおまえら将来揉めろよ」、と遺言しているようなものですね。



4.2. 民法改正後

2019年7月1日に施行された改正相続法では、夫婦間の居住用不動産の特別受益については、取り扱いが変わりました(民法903条4項)。
3だと推定しますよ、ということです。

これは大きいです。


おじいちゃんがそのつもりでも、紛争が発生して、おじいちゃんがそのつもりだったというはっきりした証拠がなければ、おばあちゃんは自宅をもらっても失う可能性がそれなりにありました。

改正によって、逆に、おじいちゃんにそのつもりがなくても、他の人がおじいちゃんにそのつもりがなかったという証拠を持っていなければ、おばあちゃんは自宅をもらったままでいられます。

勝ち目はないので争わない、ということにもなり、紛争も減るでしょう。


その要件は民法903条4項に定められています。

1 婚姻期間が20年以上の夫婦

2 夫婦の一方(亡くなった方)が他の一方に遺贈または贈与

3 その居住の用に供する建物またはその敷地

というものです。

しかも、手続きが必要になりますが、この場合は贈与税について、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで配偶者控除ができるという特例もあります。
該当するケースは多々あると思います。活用について、ぜひ専門家と相談するといいでしょう。


ようやくここまでたどり着けました。

意図的に引っ張ったのではないですが、結論まで長くなってしまいました。

お付き合いいただきありがとうございます。

2021年12月20日

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