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養育費のお話 4 どうやって払ってもらうか

2021/11/25
カテゴリー: 養育費 タグ: 養育費
佐野 就平





弁護士の佐野です。




養育費のお話3では約束の仕方を見ました。

ここでは、約束を守ってもらえなかったときに、どうやって払ってもらうかを見てみましょう。

目次

1. やっぱり自主的に払ってもらいたい
2. 督促
3. 裁判所による督促

3.1. 履行勧告
3.2. 履行命令

4. 強制執行

4.1. 直接強制
4.2. 間接強制


1. やっぱり自主的に払ってもらいたい


ここでも、やっぱり自主的に払ってもらいたい、ということで、守ってもらえる程度の約束にしてしまう、ということをあえて最初に付け加えたいと思います。

「その他」の文書にしていれば、約束したんだから、書いてあるでしょ、と督促しやすくなります。
弁護士が関わった文書なら、なおさら「払わないといけないなあ」という心理になりますので、やっぱり文書が欲しいところです。

また、前に書いたように、公正証書は、「強制執行認諾条項」をつけると、調停や裁判をしたのと同じような効果があります。
強制執行できるようになるんですね。
なので、強制執行されるかも、という恐れから、さらに「払わないといけない」という心理になりやすいです。

強制執行したらその仕返しが怖い、という方も多くおられるかと思います。
強制執行しなければ払ってもらえないくらいなら、強制執行しなくても督促程度で払ってもらえる額で妥協しておくのがいいと思います。
それでも強制執行しなければならないのであれば、弁護士にご相談下さい。どうやって安全を確保しながらやるか、ご相談しながら手続きを進めていきます。


2. 督促

督促するとして、自分が言ってもダメだから弁護士から内容証明郵便を送って欲しい、という方がたまにいます。これが結構困るのです。

内容証明郵便が効果があるかどうかは、相手が弁護士を恐れるかどうかによって変わります。
弁護士が内容証明郵便を送れば払ってくれると信じておられると、ダメだった場合どうするの、という話になかなか入れません。

弁護士が内容証明郵便を送っても払ってもらえなければ、次の手を考えなければならなくなります。

次の手はなくてもいいよ、という話ならそれで終わりですが、養育費を払ってもらいたくて弁護士に内容証明郵便を出してもらおうとするわけですから、普通はそれで終わりということにはなりません。
何もしなければ、もう養育費は払わなくてもいいよというメッセージと同じことになってしまいます。

督促1つとっても、先のことを考えてしなければなりません。


3. 裁判所による督促

3.1. 履行勧告

審判で決まった、または調停で決めたことについては、家庭裁判所が履行勧告というものをしてくれます(家事事件手続法289条1項、7項)。

養育費をもらう方が、その審判や調停をした家庭裁判所に、履行勧告をしてくれと申し出をします。
審判や調停をしたのが京都の家庭裁判所なら、自分や相手が現在どこに住んでいても、京都家庭裁判所に申し出をしなければなりません。
家庭裁判所は、養育費の支払い状況を確認して、履行勧告を出します。

この場合、家庭裁判所は必要な調査ができ、銀行、信託会社、関係人の使用者その他の者に対し預金、信託財産、収入その他の事項に関して必要な報告を求めることもできます(家事事件手続法289条5項)。


3.2. 履行命令

履行勧告ではダメかなあという場合、家庭裁判所は履行命令を出してくれます(家事事件手続法290条1項、3項)。

養育費をもらう方が、その審判や調停をした家庭裁判所に、履行命令をしてくれと申し出をします。
審判や調停をしたのが京都の家庭裁判所なら、自分や相手が現在どこに住んでいても、京都家庭裁判所に申し出をしなければなりません。
このあたりは履行勧告と同じです。

家庭裁判所は、相手の話も聞いて、相当だと思ったら履行命令の審判を出します。
履行勧告と大きく違うのは、正当な理由なく命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられる、という点です。


4. 強制執行

履行勧告、履行命令では効果がないとき、あるいはこれらを利用しないという場合、最終手段が強制執行になります。

金だけの問題だということならアリですが、養育費以外にも親子関係の維持なども考えることがあると、なかなか踏み切れないところです。


4.1. 直接強制

ここでは強制執行には2種類あり、直接強制と間接強制というものになります。

直接強制というのは、一般的にイメージされるものそのものです。
未払いの養育費は、代金請求とか貸金請求とかと同じ、単純な金銭の請求として扱われます。
不動産や預金、給料などを差し押さえることができます。

例外の1つめが、給料などの差押え禁止(民事執行法152条)です。
基本的には、税金等を控除した後の4分の1しか差し押さえられません。4分の3が33万円を超える場合は、残りを差し押さえられます。
ただし、養育費や婚姻費用については、半分とされます。ですので、半分が22万円を超えたらその残りは差し押さえられます(民事執行法152条3項)。

例外の2つめが、将来分についてです。
先ほどは「未払い」と書きましたが、養育費や婚姻費用などについては、将来分も差し押さえることができます(民事執行法151条の2)。

注意点としては、差押えは差押えにすぎません。給料を差し押さえるということは、会社はその人に払ってはいけないというところまでのことなので、きちんと会社に差し押さえた分を請求しなければなりません。


4.2. 間接強制

間接強制というのは、養育費を払わない人に対し、裁判所が決めた一定の期間内に払わなければ、別に一定額を支払え、と強制するものです(民事執行法172条1項)。

いわば別に罰金取られるようなものですので、心理的プレッシャーは強いものになります。

また、養育費、婚姻費用については、これまでの未払いだけでなく、将来6ヶ月分についても間接強制が可能です(民事執行法167条の16、151条の2第1項各号)。

これは、養育費の審判、調停をした家庭裁判所に申し立てなければなりません(民事執行法172条1項、6項、171条2項、33条2項)。

ここまで来ると、泥沼感が相当ありますね。ほんとに最終手段です。

2021年11月25日

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