弁護士の佐野です。
養育費のお話2では養育費の金額の決め方を見ました。
金額を決めても、きちんと支払ってもらえなければ意味がありません。
ここでは、どんな支払いの約束の仕方があるか、見てみましょう。
目次
1. 口約束
2. 書面で約束
3. 公正証書で約束
4. 調停で約束
5. 裁判所に決めてもらう
1. 口約束
養育費の取り決めをしていないお母さんは54.2%いました。
取り決めをしているお母さんは42.9%いるのですが、そのうち26.3%は文書がないそうです。
つまり口約束ですね。
口約束でも約束は約束ですので、払ってもらいましょう。
どのように払ってもらうか、どうすれば有利かはここでは書けませんので、個別に弁護士にご相談いただければと思います。
後で紛争になることを考えると、やはり文書にしておくのがいいですね。
しかしこれは微妙です。
文書にしろと言い出すと、ごねる人もいるでしょう。
個別のケースで判断が微妙になることも多く、弁護士でもアドバイスに困るところです。
やぶ蛇にならないよう、しっかり考えて判断しなければなりません。
2. 書面で約束
取り決めをしているお母さんは42.9%いて、そのうち15.0%はその他(何が「その他」ではないかは後で書くものです)の文書があるそうです。
覚え書きであったり、弁護士の確認文書などだと思います。
ないよりあるのがマシ、他の手続きはハードルが高い、ということで、これはこれでいい手だと思います。
養育費の取り決めをしていない理由が、相手に関わりたくない、払う気も能力もない、ということになると、こういう文書にしても意味がないかもしれませんが、できることなら、口約束よりはこういった文書にする方がいいでしょう。
ただ、無理に文書にしようとしてややこしいことになるくらいなら、口約束の方がいいかもしれません。
3. 公正証書で約束
取り決めをしているお母さんは42.9%いて、そのうち58.3%は、裁判所や公証役場で決めた文書があるそうです。
公正証書は、「強制執行認諾条項」をつけると、調停や裁判をしたのと同じような効果がありますので、その意味では最も手軽で効果の高い文書になります。
ただ、相手が承諾してくれていないと、この文書は作成できません。
また、相手が本当に養育費を支払いたいと思っている場合、公正証書を作って欲しいと言うと、不信感を突きつけるような形になり、かえって逆効果になることも考えられます。
言い方が難しいですね。
4. 調停で約束
当事者間で取り決めができないと、調停で話し合うことになります。
調停は、直接当事者で話をせず、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらい、話をとりまとめてもらう手続きです。
直接話をすると感情的になったりしますので、スムーズに話ができるようになる反面、かなり時間がかかるという難点がありますが、そもそも当事者間で話ができないので、これに頼るしかありません。
養育費だけでなく、財産分与をするかどうか、親権をどうするかなど、離婚に伴う問題の1つとして、他の問題と一緒に話し合われることが多いでしょう。
養育費は、お互いの収入を見てある程度機械的に決まることもあり、弁護士を入れずに家庭裁判所に申し立ててみるのもアリです。
その場合でも、事前に弁護士に相談しておくといいと思います。
5. 裁判所に決めてもらう
裁判所に決めてもらうのは、審判という手続きになります。
いきなり審判を申し立てることは、原則としてできません。
法律上できないわけではないのですが、まずは話し合いで決めた方がいいよね、その方が払ってもらいやすいよね、ということで、裁判所が強制的に決めてしまう前に、調停をすることになります。
調停で決まらない場合、では審判しましょう、という流れになります。
2021年11月20日