弁護士の佐野です。
2020年6月の厚生労働省の 人口動態統計速報によると、2019年5月~2020年4月の結婚の件数は62万9776件、離婚の件数は20万8781件でした。
1分に約1.2組の方が結婚し、3分に1.2組の方が離婚している計算です。
離婚される方には子どもを抱えている方も多く、養育費が気になることでしょう。今回は、5回に分けて、養育費のことを書いていきます。
目次
1. 養育費の実感
2. 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
2.1. ひとり親世帯の平成27年の年間収入
2.2. 養育費の状況
1. 養育費の実感
理論上、離婚をすれば、子を引き取って養う親は、子を養わない親から養育費がもらえます。
弁護士が受ける案件では、表現としては、「引き取る」というよりも、「渡したくない」「自分が育てたい」ということが多いように感じます。
夫や妻が勝手に出て行ったり、とても養育できるような状況ではないので、自分が 育てなければ仕方がない、というケースも多いだろうとは思います。
ですが、そういう場合は養育費なんておよそ期待できないことも多く、弁護士が出る幕はないんでしょうね。
昔は、養育費は3割の人しか払ってくれず、それも3年払って途絶えてしまうことがほとんど、という話をしていました。
なぜ3割で3年かという根拠は忘れてしまいましたが、シングルマザーの方にその話をすると、うんうんそんな感じ、という反応が多かったです。
子どもの貧困、つまり家庭の貧困が広がって、特にひとり親世帯の貧困も広く認知されるようになってきた昨今、残念ながら、昔も今も実感としては変わらないのではないでしょうか。
2. 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
少し古いですが、2016年に厚生労働省が調査をしています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188147.html
ここでは母子世帯に限ってお話ししますが、母子世帯は2060世帯がピックアップされているので、結構な数ではないかと思いますし、結果は先ほどの実感に近いものです。
少し見てみましょう。
2.1. ひとり親世帯の平成27年の年間収入
ここでは母子世帯に限定してみています。母子世帯の平均年間収入ですが、
お母さん自身の平成27年の平均年間収入は243 万円
お母さん自身の平均年間就労収入は200万円
世帯の平均年間収入(平均世帯人員3.31 人)は348万円
となっています。
子どもがいるお母さんが働いて、年間200万円というのは切ないですね。
それに、生活保護や児童扶養手当などの社会保障で43万円の上積みがあり、同居親族(成人した子どもがいるとか)の収入や、養育費、親からの仕送り、不労所得などで105万円がさらに上積みされるという計算です。
預貯金も、50万円未満の世帯が4割ほどとなっており、大半の人が、お金がない状況で上記の収入をやりくりしているといえます。なお、預貯金が50万円以上ある世帯でも、500万円未満の人で9割を占める状況です。
あくまで平均なわけですが、日々不安だらけの生活を強いられ、不安のないお金持ちはほとんどいないということは分かると思います。
2.2. 養育費の状況
そうなると、わずかでも養育費があればありがたい、ということになりますが、これも調査されています。
離婚時でも離婚後でも、お母さんがが養育費について相談したことがある人は51.2 %、相談していない人は45.5%となっています。半分の方が相談もしていないということですね。
養育費の取り決めをしているお母さんは42.9%ということです。
半分以上の方が養育費をもらっていないということになります。
なお、裁判所を介さず協議離婚したお母さんは、養育費の取り決めをしている割合が低くなっています。
さらに、子どもができたけど結婚しなかったお母さんは、さらに割合が低くなっています。
その理由は、「相手と関わりたくない」といのうのが31.4%、「相手に支払う能力がないと思った」というのが20.8%、「相手に支払う意思がないと思った」というのが17.8%となっています。
そして、離婚した父親からの養育費について、「現在も受けている」人は24.3%しかいません。56%の人が養育費を受けたことがないということです。
かなり厳しい状況が浮かび上がってきます。
2021年11月10日