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家族信託は使えるか?~高額の費用を支払う前によく考えましょう

2021/10/15
カテゴリー: 家族信託 タグ: 家族信託

弁護士の佐野です。

ここでは、家族信託について取り上げます。

一時期、大手司法書士事務所がスポンサーだったのか、ワイドショーなどでよく取り上げられたように思います。

そういうのって、契約に結びつけるよう誘導されていて、いいことしか言わないので、実際にはどうなのかを書いてみようと思います。

1. 家族信託の創設
2. 高額な費用?~実はそうでもない
3. 家族信託の典型例?
4. 家族信託で揉めるケース~認知症の場合
5. 家族信託で揉めるケース~障がい者の場合
6. 結論

1. 家族信託の創設

信託法が2006年12月改正、2007年9月から施行されて、いわゆる家族信託が広まってきました。

最近はどうだかちょっと分かりませんが、一時期はワイドショーなどで取り上げられるなど、もてはやされた時期もあるかと思います。

施行されてから話題になるまで間が開いているのが気になりますね。先ほども書きましたが、大手司法書士事務所がこれで儲けようとテコ入れしたからではないかとも思ったりします。ひねくれてますでしょうか?

2. 高額な費用?~実はそうでもない

弁護士であれ、司法書士であれ、家族信託を謳う一般社団法人などにであれ、依頼するとなると、それなりに費用がかかります。一般には、遺言作成よりも高くなるのではないでしょうか。

先ほど私はうがった見方を書いておりますが、テレビがぼったくりのお手伝いをしている不必要に高い金額設定をされていると言いたい訳ではありません。というのも、家族信託は、遺言よりももっと高度な設計が必要であるためです。

遺産をどう分けるか、というのは1回の処理で終わります。しかし、家族信託は、この財産をこの人のために使って欲しい、その後はこういう処理をして欲しいなど、何段かの構えで構成しなければなりません。

使い方は様々ですし、その後の処理も様々です。

選択肢や仮定条件などを複雑に想定して作成しなければなりません。

そのため、高額になりがちです。もちろん、作成する専門家の腕もそれなりのものが必要です。

大切な財産がある、特に高額の財産であるから、わざわざ家族信託を検討しているのに、その費用をケチると、将来大変なことになりかねません。

よほど知識や経験があったり、将来相続人になる人が1人だとか、絶対に揉めることがないと確信しているといった事情がない限り、素人が自分で作成しようとするのは無謀です。

私でも、1人だけで作成する自信はありませんので、絶対にチームで多角的に検討して作成します。

専門家に依頼するとしても、正式に家族信託の設計を依頼する前に、よく相談して、概略のイメージを共有できるまでよく考えるべきです。

家を買うくらいの慎重さが要求されると思います。費用をケチるのは、豪華な家を建てようとしているのに、基礎は見えないから安くていいやと、不十分な性能のもので済まそうとしているようなものです。

何年も経って家の荷重に耐えきれずに不同沈下や床に傾きが出てきたときに、ようやく後悔するきっかけが訪れます。

3. 家族信託の典型例?

家族信託でよく持ち出されるのは、親に自宅などの資産があり、将来親が認知症になったときのケースや、子に知的障害などがあって、その子に財産を残しつつ他の人に管理して欲しいようなケースです。

これらは、設計次第で、資産を有する親の思いを十分に残せることになります。

ただこれらも、揉めたらどうするの?ということを考えずに設計すると、結局揉めることになりかねません。

高額の設計費を支払い、結局揉めた、しかも親の思いも十分には残せなかったということになると、何をしているのか分からないということになります。

その結果が出るのも5年、10年、ひょっとすると20年後ということになりかねませんので、もはや設計に関して文句を言う機会もないでしょう。

典型例だから、他の人と同じような考えや信託契約書で大丈夫、ということはありません。その方の事情に応じてカスタマイズしなければならないのです。

4. 家族信託で揉めるケース~認知症の場合

先ほどの典型例で考えてみましょう。親に自宅などの資産があり、将来親が認知症になったときのケースです。

将来親が認知症になったとき、親名義の自宅を親自身が売却できなくなります。
認知症の親を老人ホームなどに入れたいと思っても、高額の入居一時金が出せない、ということもあり得ます。

そこで、売却するために成年後見制度を利用すると、売却には家庭裁判所の許可が必要になります。

その間、成年後見の申請、家庭裁判所の成年後見決定、自宅売却の許可申請、許可決定という流れが必要で、何ヶ月もかかります。

その間に入居できなくなることも考えられますね。

任意後見契約という手続きもあるのですが、成年後見が始まると、後見監督人が付き、その後見監督人への報酬もずっと発生するなど、それはそれで問題もあり得ます。

となると、家族信託で子に自宅を譲り、その代わりずっと親が自宅に住み続けられるようにし、いざというときは子の判断で自宅を売却して、売却代金を老人ホームなどの入居一時金や月々の施設使用料に充てるというのは、とても有効な方法ということになります。

ただしこれは、親子の信頼関係が強固な場合が前提です。

もし、子が、親を適当なところに住まわせ、自宅を売却して代金を横領しようとしたらどうでしょう。

それ自体は家族信託契約違反ということで違法ということになるかもしれませんが、その違法を追及する人はどこにいるのでしょうか。

そういう人がいるとして、違法を追及する手間はどうでしょうか。

弁護士に依頼するとしてその費用は誰が出すのでしょうか。

子が自宅を親のために管理する目的で所有する人になる(これを受託者といいます)上で、信託法や信託契約を守るのは当然で、報告書の作成義務(信託法37条)などもあったりしますが、本当に忠実(信託法30条)にやってくれるのかは分かりません。

残念ながら、弁護士や司法書士が、成年被後見人の財産を横領したという話もちらほらあったりします。

専門家ですらそうなんですから、誰に財産を託すかは慎重に検討しなければなりません。

一度横領されると、普通は全額回収できることはありません。一部でも、本当に回収できるかどうか分かりませんし、回収できるとしても手間暇もかかります。

家族信託の制度が悪いというわけではありません。

単に家族信託の設計をすれば大丈夫、なんてことはないということが大事なのです。

5. 家族信託で揉めるケース~障がい者の場合

次に、子に知的障がいなどがあって、その子に財産を残しつつ他の人に管理して欲しいようなケースを考えてみましょう。

私は、障害者自立支援法応益負担違憲訴訟や成年被後見人の選挙権回復訴訟などに関わっておりました。また、障がい者の親御さんとの関わりや、障がい者ご自身のご相談をお聞きすることもあります。

理解のある方は、就労体験や就労移行事業といった支援をされていますし、障がい者の可能性に期待を寄せておられたりしますが、他方で2016年7月26日に起きた相模原障害者施設殺傷事件のような事件もあります。

十分な理解と支援があるとは言えない中で、親御さんはみなさん一様に、障がいを抱えるお子さんの将来、特に親御さんが高齢になったり亡くなったりした時のことをとても案じておられます。

障がいを抱える子に兄弟がいて、その兄弟に管理を任せたい、自宅含めて財産はその障がいを抱える子に譲りたい、と親が考えるのも自然ですし、その切実な気持ちは何とかしてあげたいところです。

しかし、単に障害を抱える子に財産を相続させたり、贈与したりしても、その子が適切に管理できるわけではありません。

管理だけを兄弟に任せても、その子自身が手続きをしなければならない場合があり、そのときは進退に窮します。

贈与すれば税金のことも考えなければなりません。

そうすると、家族信託で、バランスを図りながら障害を抱える子に財産を与えつつ、兄弟に管理してもらうことにするというのはいい案です。

ただ、これも、兄弟間の信頼関係や、兄弟が障がいを抱える子に対する思いが強いか、しっかりしているか、といった事情が大きく関わります。

兄弟がいつまでも同じように障がいを抱える子を大事にしてくれるのか、結婚や転勤、事業の経営悪化などで事情が変わったりしないか、何かあったとき誰が追及するのか。

こういった問題は、先ほどの認知症の例と変わりません。

家族信託の制度が悪いというわけではありません。単に家族信託の設計をすれば大丈夫、なんてことはないということが大事なのです。

6. 結論

さて、家族信託の難しさを、少しご理解いただけましたでしょうか。

問題が起きないことを前提にルールを定めるだけなら、それほど難しくはありません。

ですが、その場合、そもそも家族信託を使う必要性がない、ということもあり得ます。

信託を必要とする方のニーズは様々です。しかし、そのニーズによって不利益を被る方もおられることを想定しなければなりません。

また、受託者には大きな権限が与えられます。

「少しくらいええやんか。」これを本当に防ぐためには、それなりのものを設計しなければなりません。

繰り返しますが、家族信託の制度が悪いというわけではありません。単に家族信託の設計をすれば大丈夫、なんてことはないということが大事なのです。

家を建てるつもりで建築士と詳細に打ち合わせるイメージで、家族信託を考えていただく必要があると考えております。

2021年10月15日

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